岩手・早池峰山麓の旅
岩手・早池峰山麓の旅
岩手県への旅は、突然のことでした。
ある日、それも夜になってから
急に田染が、〈あした、花巻に行く〉と言い出したのです。
思い立ったら矢も楯もたまらない彼のことです、早々に支度をして
ほとんど寝る間もなく家を出て
気がついたら汽車に乗っていた、そんな状態でした。
そう言えばその頃、新聞の切り抜きを見ながら
何か思いあぐねている風があったのですが・・
当時、朝日、毎日、読売の3紙をとっておりましたので
今になっては、どの新聞だったのか思い出せないのですが
紙面の茅葺民家をどうしても見たいと思ったようです。
早池峰山麓の村に行きたい、ただそれだけ・・
下調べもないままでしたので
花巻駅の改札を出て、さてどうしたものか・・そんな状態でした。
いずれにしても、バスにでも乗らない事にはと思い
たまたま止まっていたバスの車掌さんに
〈 そうちね 〉に行きたいのですが・・と思い切って尋ねていました。
車掌さんとのやり取りから、
〈 そうちね 〉は誤りで〈 はやちね 〉であること
またそのバスに乗れば、早池峰方面には行けるけれど
詳しいことは役場で尋ねるようにと
役場の所在地なども教えていただけました。
そして役場では、会議前とかで忙しいご様子ながら
親切に調べて下さって、大助かりいたしました。
いろいろありましたが
無事に、目的地である茅葺の家の前に立つことができ、ほっとしたものの
想像と現実とはちがっていたようで、
そのお宅を絵にすることはできなかったようです。
でも、そのお家の方は、取材の日のことをよく憶えていらして
獅子頭も見せてくださいました。
そして翌日からは、役場の方に教えていただいた
茅葺民家が残っている場所、武士沢、天王、久出内などを
歩きはじめました。
当時既に、曲がり屋は
残り少なくなっていたようです。
この時の民家・道の油彩画は
ホームページ < 岩手県・早池峰山麓の旅 > でご覧いただけます。
はじめての岩手の旅は、こうして、多くの方々に親切にしていただいて
兎にも角にも無事に終了いたしました。
早池峰神社にもお参りできました。
その時の旅で気がついたこと・・
土地の人と言葉を交わしていて、はじめは少々戸惑いましたが
それこそ、啄木が〈 ふるさとの訛りなつかし・・ 〉と詠んだ
そして私がはじめて聞いた、岩手の言葉だったのです。